M8(エムエイト)2009年02月16日

M8(エムエイト) (集英社文庫)
高嶋 哲夫
集英社
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また先週読み終わった本を紹介しようと思う。
タイトルは「M8(エムエイト)」。Mというのは「マグニチュード」の略。
この小説は「東京にマグニチュード8の直下型地震が発生した場合」をシミュレーションした小説だ。

著者の高嶋哲夫さんは、一昨年映画化され、昨日TVでも放映された「ミッドナイトイーグル」の原作者。僕はこのミッドナイトイーグルの原作も読んでいる。
で、まったくテーマの違うミッドナイトイーグルとこのM8を比べるのはどうかとも思うが、僕はこのM8の方に、より圧倒され、同時に感銘を受けた。どちらも同じく卓越した想像力で描かれた小説だとしても、読後、現実感と危機感のようなものを伴って心に響いてきたのが、このM8の方だったのだ。
これは非常に多くのデータをバックボーンとして、それを小説の中で緻密に取り込んでいるからだろうと思う。普段忘れてしまいがちな地震災害に対する啓蒙の意味としても価値がある小説だと思う。

勝手な想像をすれば、こうした小説はきっと描くのが難しいだろうなぁ、きっと。
単純にデータを並べるだけでは面白さに欠けるし、人物を描く方にシフトし過ぎても現実感に欠ける。そのバランスを取ったとしても、登場人物が多すぎると散漫としたストーリーになってしまいそうだし、少なすぎるとテーマが小さくまとまってしまいそうだ。
その意味ではこの小説は無駄な登場人物がいない。登場するすべての人物には意味があり、多くの登場人物には希望がある。
その救いがあるため、この小説を単なる教導的なものではない、あるいは危機感を煽るだけではない、「生きた小説」にしてくれていると感じられる。

CG全盛の今でも、この小説を映画化するのは大変だろうなと思う。
でもこうした小説こそ、ぜひ映画化して欲しいよなぁと、読後そんな感想を持った小説だった。

コメント

_ 通りすがり ― 2009年03月13日 01時29分

続編のTUNAMIも面白いですよ

_ weekend-wander ― 2009年03月22日 13時09分

通りすがりさん、ご紹介ありがとうございます。
今手元にある未読の本が片付いたら、お薦めの本、読んでみたいと思います。

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