老人 VS 若者2012年05月26日


ふと思い出した話。
ちょっと面白い・・・と言っては失礼ですが、先日の「小樽祝津にしん祭り」からの帰りの電車で、こんなエピソードがありました。
札幌~小樽間を走っている電車には、エアポート号などのボックス4人掛けの電車と長椅子型の電車があります。今回帰りの電車は長椅子型シートの電車でした。
さて、そんな電車に出発間際になって乗り込んできたのが、かなりお年を召したご老人二人。おそらくは80歳近いかそれ以上のお年と言う感じです。
すでに座席はほとんど埋まっていましたが、幸いシートの向かい合わせでお二人とも座ることができました。本来ならば、優先席に二人並んで座れると良かったのでしょうが、お二人が別れて座ったことで、小さな事件が発生しました。

おそらくは法事の後だったのでしょう、お二人とも酒がかなり入っていたようで、特にお二人の内の年下の方は(兄さんと相手を呼んでいましたので、弟なのかな? 紛らわしいので老人(兄)と老人(弟)と以下書くことにしましょう)、かなりの大声で通路越しに会話を始めます。それでなくとも、お年を召した方は声が大きいものですが、周りが静かなだけにかなりの騒々しさ・・・。おまけに荷物の中から缶ビール取り出して飲み始めます。

さすがに「ちょっとうるさいいなぁ。もうちょっと静かにしてくれないかなぁ」と、僕も含めておそらくは他の乗客皆が思い始めたところで声を上げたのが、老人(弟)の隣に座っていた20代と思しきカップル。
「おい、ジジイ!少し静かにしろよ。周りが迷惑してんだろぉ、この野郎!」
言い方はかなり乱暴ですが、言っていることは正論。「もう少し言葉遣いがあるよな」と思いつつも、これもまた、このときはきっと誰もが「よくぞ言った!」と思ったことでしょう。
ここまでは周りは若者を応援する空気が漂っています。
でも老人(弟)も負けてはいません。酔った勢いもあるのか「なんだ、その言い方は!もっと年寄に対して優しい言葉が掛けられないのか」と憤然とした口調で反論です。
で、しばらくは言い争いが続きます。さすがに若者も老人(弟)に対して手を挙げるようなことはしませんが、ただ結局言葉の応酬がしばらく続き、これがまたうるさいうるさい・・・。
しばらくしてこのままではラチが開かないと思ったのか、今度は彼女の方が車掌に注意してもらいに行ったようです。
そこでさっきまで元気いっぱいだった老人(弟)が、急に黙り込んで床をジィーツと見つめ始めます。車掌の手が空いて座席に近寄ってきたときには完全に萎れきった状態。カップルも「もう大人しくなったので、大丈夫みたいです」と言うことで、完全に若者の勝利!・・・で、終わるかに思えました。
ところがこれは"第1ラウンド"の終了でした。

しばらくして・・・
老人(弟)がスクッと立ち上がって、向かいの席の老人(兄)に向かって、静かに語り始めました。
「今日は兄さんに会えて、本当に良かったよ。もうお互いこれが最後になるかもしれないしな」
「本当は兄さんと別れるまで、色んな話をしたかったんだけどな。残念だよ」
老人(兄)の方は札幌で下車し、老人(弟)の方はそのまま先まで行くようです。勝手な想像ですが、きっと遠距離に住まわれていて、滅多に顔も合わせられないのでしょう。
すると老人(兄)はこう答えました。
「まあでも、お互い元気で生きてさえ言えれば、きっとまた、こうやって会うことができるから」
と、しみじみ・・・。

途端に周りの空気が明らかに一変。その一瞬で空気は老人(兄弟)への同情に変わったような気がします。チラッとカップルの方を見やると、二人の会話はなく、なんとなく不機嫌な様子で互いにそっぽを向いています。
そのタイミングで近くに座っていた母娘が立ち上がり、「どうぞこちらへ。二人並んで座ってください」と席を勧めます。
老人(弟)は「いやあ。本当にありがたいです。ほらっ、兄さん、親切な方が席を譲ってくれたから一緒に座ろう」とカップルの方をチラチラ見ながら、話します。
もしかしたら、この老人(弟)、かなりの役者かも・・・・。
なんと大逆転で、第2ラウンドは老人側の完全勝利!です。

ここで僕は各駅停車に乗り換えたため、その後どうなったのかはわかりません。たぶん第3ラウンドはなかっただろう・・・と期待してはいますが。

いくら酒が入っているとは言え、お年寄りでもマナーを守るという心遣いは必要です。
若者も、もう少し言葉を選んで注意をするという心遣いが必要です。
優先席に座っている人は、お二人並んで座れるように席を譲る心遣いがあればとも思います。
みんなちょっぴりでも、相手や周りへの心遣いをしていれば、きっとこんな面倒なことにもならないわけですよね。
いやぁ、これってコミュニケーションの基本ですね。僕自身も注意しなくちゃ。

面白いと感じながらも、後で色々なことを感じさせられたエピソードでありました。




コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://weekend-wander.asablo.jp/blog/2012/05/19/6452137/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。