【書籍】実録・老舗百貨店凋落2009年07月14日

実録・老舗百貨店凋落 〈流通業界再編の光と影〉 (講談社文庫)
北海道新聞取材班
講談社
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【最初に注記】
この本を読み終わったのは5月頃だったと思います。
本の感想を記事にしようと思いつつ、途中まで書きかけたのですが、どうにも気が重いテーマでもあり、書き渋っている内に忘れてしまっていて、今頃になってしまいました。
でも札幌人の僕としては、どうしても触れておきたい本ということで、いささかタイミングを逸している気がしないでもありませんが、今回記事にしました。
【注記はここまで】


札幌の中心部を南北に分ける大通公園。
この大通公園に面して、札幌の老舗百貨店"丸井今井"の札幌本店がある。地元の年配の人たちからは、未だに「丸井さん」と"さん"付けで呼ばれるほど長年親しまれてきた百貨店だ。

その丸井今井も、度重なる経営危機を乗り越えてなんとか今年まで頑張ってきたのだが、ついに力尽き、およそ400億円の負債(別の報道では470億円とか細かく502億円などととしている記事もある。何れにしても多額の負債であることに変わりはない)を抱えて今年1月に倒産してしまった。
2005年の2度目の経営危機以降は、仕入れ関係で関係の深かった伊勢丹の支援を受けながら業績回復を目指していた経緯もあり、再建のスポンサーとして伊勢丹が確実視されていたが、そこに高島屋もスポンサーとしての名乗りを上げ、状況は混沌とし始める。
そして紆余曲折の末、スポンサーが「三越伊勢丹ホールディングス」に決定したというニュースが、5月連休の直前に流れた。
これにより不採算店舗の旭川店、室蘭店は閉店し、札幌と函館の二店舗で再生への道を歩みはじめることとなった。

ここまではネットで普通に拾える今年に入ってからのニュース。
そしてここからが表題の本の話だ。

この本は、北海道新聞社取材班が上に書いた2005年の経営危機までを追いかけてまとめ上げたノンフィクション。
札幌と言う地方都市にとっては、様々な点でシンボル的な存在の老舗百貨店だけに、その内容にも強い意気込みが感じられる本だった。
最終章は未来へ向けての提言で締めくくられる・・・だがその行末をすでに知ってしまっている今、読後にはなんとも虚しさのようなものだけが残ってしまった。もちろんこんな印象を感じてしまうのは、この本に問題があったからではない。悔しい思いをしているのは、そして虚しさを感じているのは、この本の執筆に関わった取材班の方たちも同じに違いない。
確かに予想を遥かに超えた流通業界の変化と経済環境の悪化があったことは事実。また(敢えて知ったかぶりで言わせてもらえれば)それらの変化へ対応して行けなかった丸井今井の経営陣が力不足だったことも事実なのだろうと思う。
何れにしても、とても興味深くまとまった本だというのに、その読後に、"晴れない気分"を感じてしまったことが残念だった。

丸井今井は7月いっぱい閉店セールを実施して、8月から再スタートを切る。従業員は全員一旦解雇され、"必要最小限"の人材だけが再雇用されることになる。
いつの日か再生が成り、"実録・老舗百貨店『凋落』"ならぬ"実録・老舗百貨店『復活』"というタイトルの本を読んでみたいものだ。その時こそ、きっと読後爽やかで、明るい気持ちになれるかも知れない。